伝統工芸 漆とは
伝統工芸(でんとうこうげい)とは、長い歴史の中で代々受け継がれた熟練の技術により手工業で作られ、日常生活に使われる漆器、陶磁器、和紙、木工品、鋳物などをいいます。漆器に使われる漆は1万年以上前から日本人の生活に欠かせない材料であり、海外では、英語でJAPANと訳されます。
漆器の技術と製造工程
① 素地作り
天然木を6ヵ月から1年じっくり乾燥させた後、ロクロを使って手作業で形状をつくります。
② 塗り
塗りの工程は、下塗りと上塗りとに分けられます。下塗りは、製品の表面には出ませんが
漆器の強度など品質を左右する大切な部分で、「塗り」、「乾燥」、「研ぎ」を何度も繰り
返します。上塗りは、均一の厚さに仕上げる熟練の技に加えて、漆を乾燥させるための一定
の温度、湿度を維持するデリケートな環境が必要です。この塗り工程はどんなに小さな漆器
でも下塗りから上塗りまでは3ヶ月以上の期間が必要です。
③ 研ぎ
塗りと塗りの工程の間には砥石やサンドペーパーを使って表面を「研ぐ」という工程があります。
研ぎは漆器の美しさや強度など完成度を左右する大切な工程です。この”研ぎ”の工程は、女性の
職人が担っている場合が多いです。重箱などの箱は「角物」は男性に比べて女性は手が小さく、
指が細いので細かい部分の作業に向いているのです。
④ 沈金
漆器を彩る加飾はさまざまで、伝統的なものとして蒔絵(まきえ)と沈金(ちんきん)があります。
⑤ 蒔絵
蒔絵は、筆に漆を含ませて模様を描き、そこに金粉・銀粉な どを蒔(ま)きつけ、研ぎ・磨き
を繰り返してつくりあげます。沈金は、刃物で絵柄を彫り、その彫り跡に金箔・銀箔、金粉・
銀粉、顔料等を漆で接着させ、仕上げていきます
⑥ 蒔絵の技法
蒔絵の技法は、器の表面に漆で文様を描き、金・銀などの金属粉や色粉を蒔(ま)きつけて
付着させる、日本独自の漆工芸。奈良時代に始まりました。蒔絵を大別し「平蒔絵」
「研ぎ出し蒔絵」「高蒔絵」とあります。
最近では、日本の歴史、伝統工芸が世界的にも話題となり、製品や見た目の美しさやおもてなしに限らずその技法や職人、製造工程の詳細から職人とマインド(職人の心)にも注目されています。下の映像は、遠く中東カタールの衛星放送局が特集を組んだ日本伝統工芸番組で、漆器の製造工程から漆器職人に焦点を絞って、詳細に渡って説明しています。